　やっちゃった、、、
　以前は年に何度か一緒に釣りに出かけていた友人が、このところ釣りに行かない。釣りに飽きてしまったわけでもないし、体の具合が悪いということもない。今週も富士山に日帰りで登ってきたらしいから、確かに体調はいいようだ。漁協の組合員だから年会費は少し安いが、それにしても元は取っていない計算だ。思い切って誘ってみると、すぐにＯＫ。３時半にコンビニで待ち合わせ、餌は私の手持ちをあげることで、約束完了。
　今朝、外の明るさに気づいて時計を見ると、、、5時。やっちゃった！万全を期して、女房にも頼んでおいたのに、気がつかなかったとか。待ち合わせに２時間以上遅刻、いずれにしても行くだけ行かなくては。渓流脇の草むらを、ミミズを探しながら歩く釣友の姿が目に浮かんだ。
　浅瀬の小屋に6時、車はあったから沢には入っているようだが、どこだろう。監視員さんに、組合員が来なかったか、その人はどこに入ったか聞いてみる。確かに一人来たが、どの沢だか分らないとか。ボードのマグネットを見ながら、彼の気持ちを考えると、悪沢かと思えてきた。悪沢の釣り人は5時10分通過らしい。時間的には少し遅いが、一か八かだ。もし違う人だったら、今日は釣りを諦めて退散しよう。
　
　幸運、、、
　悪沢出合いに6時半、ここで足周りの支度をして、35分に入渓。水量はわずかに増水、条件は良さそうだ。何しろ、釣り人に追いついて、釣友かどうかを確認すること。もしそうだったら、お待たせした餌を届けること。ついでに、やる気が残っていたら釣りをする。こんなことを考えていた。
　悪沢は、相変わらずいいポイントが続く素晴らしい渓相だ。今日は水が少し多いせいか、喉から手が出るような落ち込みが続く。だが、まずは入渓者を確認しなくては。まだ1時間ほど釣った計算だから、歩いて行けばすぐに追いつくはず。
　10分で右から滝、歩くだけだとやけに早い。傾斜があるので歩きっぱなしだと、疲れも大きい。30分歩いても、釣り人は現れず。もしかしたら、序盤は飛ばして、ある程度上がってから釣りを始める人だろうか。釣友は、たぶんすぐに釣り始めるだろうから、違う人かもしれない。
　雨も小雨だが、降り続いている。小さな滝のポイントまで歩いて見つからなかったら、人違いだから撤退しよう。そんなことを考えていた7時15分、弁当を食べている釣り人を発見。やはり、釣友だった。何故わかったのかと驚く釣友、お釈迦様にはお見通しなのだ。

　二人で、、、
　釣友が言うには、餌がないので一旦小田原まで買いに行ってから、世附に来たとか。だから、時間的に遅かったのかと納得。いずれにしても、当方の失態で随分迷惑をかけたと謝罪した。こんなことで友情は傷つかないだろうが、申し訳ないことをしてしまったのは、事実だ。
　久しぶりで調子が出ないのか、チビを2匹釣っただけらしい。あとは、魚信があっても掛からなかったとか。何しろ、良型を釣ってもらって、釣りに帰ってきてほしいのだ。だから、優良ポイントはできるだけ譲って、釣友に楽しんでもらえることを願った。
　8時過ぎ、釣友は少し上流を釣っていた。何ともないような平凡な流れに餌を入れると、微妙に魚の気配。これは、いるな。丁寧に何度も繰り返して流し続ける。そして、やっと掛けた。良型は、右に左に逃げ回ったが、やっとタモへ。そのまま、釣友の所まで駆け上がっていく。こんなサイズがいることを、教えたかったのだ。
　写真を何枚か撮って、メジャーで計測。体は細いが、29センチの岩魚だった。

　納竿、、、
　8時40分、第一投目に仕掛けに軽く触った気がした。ここも、いる。何度か投げ入れる場所を変えながら、仕掛けを入れる。すると、水中で反転する魚影が見えた。合わせると、しっかり掛った。今度はヤマメ、２２センチ。体高のある、ヒレのきれいな一匹だった。
　すぐ上で釣っていた釣友にも見せたが、何だか気になってくる。早く釣友にも良型が来てほしいのだが、そうはうまくいかない。山神沢が左から合流、ここで休憩。さらに悪沢を釣り上がるが、取水でも、その先でも良型は来なかった。
　しばらく行くと、左から沢。その先の小さな滝が好ポイントなので、釣友に行くように勧める。ずっと粘っているので、近づいていくと、良型が掛ったが、バレてしまったらしい。今年初の釣りで、まだ感覚がつかめないのだろう。
　その上流の滝も釣友が探ってみたが、何度も魚信はあったのだが、ついに良型はかからなかった。
　後から遅れてやってきて、良型を釣ってしまった自分の立場を考えると、申し訳なくて仕方がなかった。釣友にも、ぜひ良型を釣ってもらいたかったが、親の心子知らず、じゃなくて、俺の心ヤマメ知らず。
　帰りの山越え、仕事のことやいろいろなことを話しながら来たので、苦しく感じることもなかった。これからも、ずっと大切にしたい、そんな釣友だ。ありがとう。