　雨の中、、、
　３時前、目が覚めた。窓をそっと開け、外の様子を見ると結構強く降っている。迷ったが、雨の中で釣る気にはなれず、そのまま寝た。次に目が覚めたのが４時過ぎ、外は明るくなり、雨も止んだようだねぇ。すぐに起きて、支度して、飛び出した。
　車を走らせながら、どこに入るか考える。この時間から世附を歩くには出遅れた感じだし、雨が強くなっても安全な小川谷で遊ぶことにした。玄倉の林道を走ると、車は泥だらけになる。いかにもアウトドア好きな感じで、嫌いではない。親からは、洗ったらと言われてしまうが。
　小川谷との分岐に、車が１台。漁協のNさんだ。先行者を聞くと、まだ誰もいないとか。それなら、小川谷の最下流から釣り上がると伝える。橋の先に車を止め、川に降りたのは５時２０分だった。
　
　期待したほどには、、、
　３時に雨が相当降っていたので、増水に濁りを期待してきたのだが、わずかな増水だけ。釣り始めてすぐに、チビヤマメが掛ってくるから、活性は上がっているようだ。釣れないよりはいいが、満足感はない。
　チビメを何匹か掛けて、堰堤。瀬が多いこの区間は、堰堤の落ち込みが最高のポイント。期待して仕掛けを入れたが、今日は反応がない。堰堤は左から巻ける。
　詳しくは書けないが、深みもあるポイント。第一投目に、何だか違和感を感じた。慎重に、再度投げ入れる。すると、目印がスーと横へ動いた。

　デカイ、、、
　来たっ！合わせ！ガクっと竿に伝わる重さ、これはデカイ。ググググ、、と、すごい勢いで落ちる水の落ち際へ引き込んでいく。竿を横にためて、耐えようとするが、張りつめた糸に激しく落ちる水で、手に強いバイブレーションが伝わってくる。こうやって、いつも糸を外しているのかもしれない。相当、狡猾なヤツだ。
　自分に落ち着けと言い聞かせながら、相手の出方を待つ。一気に引き合って、糸を切られた経験が何度もあるから、無理はしない。しばらくして、相手も疲れたようで、やっと出てくる感じがした。このまま後ろに歩いて、砂の上に引きずり出そうかと考えていると、またグググと引き込まれた。そして、今度はピンっと仕掛けが飛んで行った。

　そして、、、
　頭の中が真っ白になった。千載一遇のチャンスを、自分の未熟さから逃してしまった。はっきり手ごたえがあったのに、ミミズの先がちぎれているのを見ると、掛かりが浅かったのかもしれない。もう一度食ってくるかもしれないと、諦めきれずに流し続けたが、ついに二度とは食ってこなかった。
　いったん車まで戻り、上流へ行ってみた。ヤヒチ沢の出合いから堰堤までやって、上流へ歩いて行くと川崎ナンバーの車が１台。しかたなく、その下流の堰堤を探ってみたが、来るのは相変わらずチビメだった。
　釣り出してすぐに降り始めた雨は、８時過ぎには止み、青空が見えてきた。青をバックに新緑の葉が風に揺れている。１０時、納竿。釣り逃がした魚は大きいというが、そのショックも大きく心の中に残った。また、針の痛みを忘れたころに行ってやる。覚えてろよ。チンピラの捨て台詞のように心に叫んで、帰途についた。
　
　