　解禁！
　禁漁は解禁の喜びを味わうためにある、と誰が言ったか知らないが、まさにそんな感じ。釣りを始めてから長い年月を経た今でも、解禁は心騒ぐものだ。例年だと、地元の狩川でこの日を迎えるのだが、今年は初めて丹沢まで行ってみることにした。
　週の半ば、職場に見捨てられていない限り、そうたやすく休暇は取れないはずだから、明るくなる時間に合わせてゆっくり出かけることにした。２４６から清水橋を右折、県道を走っているのは前に１台、後ろに１台。こんな時間に、結構飛ばしているから、釣りかもしれない。途中で１台に追いついたため、４台でのレースとなった（競走はしていないが）。
　丹沢湖を渡ってすぐ、１台目は左折。世附だな。残り３台は、そのまま用木沢出合いの行き止まりまで一緒だった。驚いたことに、既に車はいっぱい。さすが、西丹沢だ。何とかスペースを見つけ、駐車。漁協の係員と言葉を交わす。支度ができた順に、暗い道を登っていく。解禁日、沢割りしても意味ないか。

　初物、、、
　情報だと、駐車した周辺から魚は入っているとのことだったので、少し歩いて手沢橋から川に降りた。まだ暗いので、ヘッドライトの明かりが頼りだ。ウェーダーの下にタイツ、その下にダウンパンツを穿いているので、足が思うように動かない。怪我でもしたら大変なので、焦る気持ちを抑えて慎重に進む。
　６時少し前から、何とか仕掛けが見えるようになる。早速、イクラを餌に、今シーズンの第一投。周りを見ると裸の枝や枯れた草、流れの音だけが私を包む。この自然の中に戻って来れたことを、しみじみ自覚する。
　暫く同じ場所で流していると、やっと仕掛けに変化が出た。合わせも決まり、流れから出てきたのは今年の初物、小さいがキレイなヤマメ。まさかこのサイズは、放流ものではないだろう。ここには入っていないのかな。上流へ移動したが、同じようなサイズばかりが３匹。
　何気なく顔を上げると、既に上流に釣り人の姿が。解禁日だから、そういうものだ。しばらく後ろから釣りあがったが、場所を変えた方がいいと判断。まだ６時半だった。
　　
　やっと、、、
　駐車場所に戻り、橋の下流に入ろうかと覗くと、釣り人。仕方なく、用木沢の堰堤をやってみることにした。立派な橋が登山道となっているが、すぐその上流にある堰堤。いいポイントなのだが、あまり釣れたことはない。今日も既に足跡あり。だが、第一投に何となく不自然な反応が。いる、な。
　場所を変えながら、何度も投げ込む。すると石の陰で魚信、合わせるも切れた。今年の初合わせ切れだぁ。少し前に枝に引っ掛けて切れた仕掛けを結んだが、その場所から切れたのだ。気を取り直して、しつこく流す。すると、また来た。今度は、しっかりゲット。放流の良型だが、なかなかキレイ。上あごの針を外しキープしようとすると、まだ仕掛けが掛かっている。何と、さっき合わせ切れしたヤツがまた食ってきたのだ。呆れるというか、驚きというか。
　
　その後、、、
　その後、橋周辺でまた良型を釣り上げた。何人かの釣り人と話したが、みな決まったように「２つ、それも小さいね。」という感じ。一応、良型は２匹釣ったからいいか。８時半、納竿。車は、さらに増えていた。お祭、ですね。
　まだ帰るには、ちと早い。この前に下見しておいた、箒杉の近くの川へ。つり橋を渡って、すぐに入溪。でも、何だか魚がいそうもない。ポイントはそれなりにあるのだが、全く来ない。すぐに先行者の足跡を発見、でも、その人釣れたのかな？魚の気配がしないのだけれど。１時間足らずで切り上げ、また移動。
　大滝沢をやってみようと思ったが、入口で電気工事の車が数台停車中。こちとらは遊びだが、あちらさんは仕事中。スゴスゴ、撤退した。

　さらに、狩川も覗いてみた。苅野集落の下流、川がキレイに均されていて、魅力の少ない渓相。さらに、水流の弱いところには、ドロドロした茶色のものが。情報では、この辺りで漁協の車を見たとのことだったから、一応竿を出すことにした。
　車も止まっているから、先行者は何人も入ったに違いない。でも、全て釣り切ることは至難の業。必ず、釣り残しがあるはずだ。１匹でいい、オコボレに与りたいと願いを込める。でも、魚信はない。正午に近いせいか、風がだいぶ出てきた。あの上の堰堤まで、と決める。だが、最後の望みをかけた堰堤には、プールがなかった。
　納竿か、でも待てよ。よく見ると、小さな四角い穴が、ブロックに空いている。そして、それは案外深い。道志川で、ブロックのすき間にヤマメを狙う友人がいたのを思い出し、ワカサギならぬヤマメの穴釣りをやることに。イクラをそっと落とすと、明確な魚信。合わせも決まった。だが、すごい引きで抵抗する。な、なんだ？糸をブロックの端で擦られたら一発で切れてしまう。慎重にいなしながら、やっと取り込んだのは、丸々と太ったニジマスの８寸。力が抜けていった。

　結局、家族全員の分は揃えなかった。今年もこの調子で、遊びまくりたいものだ。